商標「病みかわいい」が登録されなかったという以下のブログが目につきました。

江崎びす子「病みかわいい」商標出願騒動について

2019年3月4日から様々なツイートが元で炎上しているイラストレーター、江崎びす子氏が、自身の活動するジャンル「病みかわいい」を2017年に商標出願していたことが3月11日の23時頃明らかになりました。

上記記載内容は、下記URLのブログから引用

https://ameblo.jp/fakepioneer-yamikawaii/entry-12451670484.html

 

 

このブログでは、この騒動のTwitterでの反応を取り上げています。

#病みかわいい ってワードを江崎びす子以外の人間が使ったら商標登録のせいで一発レッドカードじゃん。私もジャンルだと思ってたかんだけど。このジャンルは詳しくないけどもはや日本のカルチャー的なものだと認識してる人は多いだろうしほんとうにこれがカルチャーなら衰退する未来しかない

江崎びす子が #病みかわいい を商標登録しようとしてた件、弾かれてたみたいでよかったけど、それにしても根性腐ってるなとは思う。商標登録されてなくてもしようとした事実と人間性は変わらないからな

 

「病みかわいい」という言葉を商標権として独占することに反感を抱いている人が多くいたようです。

 

「病みかわいい」とは?

「病みかわいい」とは、造語なのか、世間一般に広まっている言葉なのかを知りたかったので、Googleの生成AIに聞いてみました。

私は、この「病みかわいい」という言葉を知りませんでした。

「病みかわいい」とは、2013年頃に流行した「ゆめかわいい」の派生ジャンルです。ゆめかわいいに「病んでいる」要素や社会的にタブーな要素、暴力的要素などを加えた新たなカワイイカルチャーとして国内外から注目されています。

 

「病みかわいい」は、可愛らしさの影に潜む負の感情、狂気、精神的な病理などを表現したもので、パステルカラーやセーラー服などの女性が好むモチーフを基調としています。

 

「病みかわいい」のファッションは、可愛さと心の闇「病みかわいい」とは、2013年頃に流行した「ゆめかわいい」の派生ジャンルです。ゆめかわいいに「病んでいる」要素や社会的にタブーな要素、暴力的要素などを加えた新たなカワイイカルチャーとして国内外から注目されています。

 

「病みかわいい」は、可愛らしさの影に潜む負の感情、狂気、精神的な病理などを表現したもので、パステルカラーやセーラー服などの女性が好むモチーフを基調としています。

 

「病みかわいい」のファッションは、可愛さと心の闇を併せ持つスタイルで、フリルやシフォン、リボンなどの女の子らしいデザインに、ガスマスクや注射器、包帯など一目で病んでいるとわかるモチーフが使われています。色は可愛らしさを表現するパステル系や、シックな黒、赤を使うことが多いです。

 

「病みかわいい」のイメージは以下のようです。

以下の画像は、下記URLより引用

https://dic.pixiv.net/a/%E7%97%85%E3%81%BF%E3%81%8B%E3%82%8F%E3%81%84%E3%81%84

病みかわいいのイメージ

病みかわいいのイメージ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女の子はかわいいものの、カッターナイフを持っていて、精神が病んでいる感じがします。

なるほど、「病みかわいい」とは、このようなことをいうのかと思いました。

 

この「病みかわいい」の商標出願は、拒絶査定されています。

 

興味が有ったので、商標「病みかわいい」の商標出願(商願2017-055042)の審査記録閲覧請求をして、拒絶理由通知書意見書を取り寄せてみました。

 

商標出願「病みかわいい」の拒絶理由は?→識別力の無い商標

拒絶理由通知書の内容

以下は、拒絶理由通知書の内容です。

この商標登録出願に係る商標(以下「本願商標」といいます。)は、「病みかわいい」の文字を普通に用いられる書体で表してなるところ、近時、若い女性の間で「病んでいる」及び「かわいい」の語を組みあわせた「病みかわいい」の語が、「病んでいてかわいい」の意味合いで用いられており、下記に示した内容に照らせば、本願指定商品を取り扱う分野、特にファッション業界において、「病みかわいい」の文字がジャンルの一を示す語として一般に使用され親しまれている実情が見受けられます。

 

そうすると、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する需要者・取引者は、当該商品が単に上記ジャンルに照応する商品であることを認識するにとどまり、その商品の顧客吸引、販売促進を図るためのキャッチフレーズの一を表したものと理解するにすぎず、下記のとおり様々な媒体で用いられている文字であることから、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものと認めます。

 

したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当します。

 

審査官は、商標「病みかわいい」を、識別力の無い商標として、認定しています。

 

この識別力とは、その名前を商品・サービスに付けたときに、他の同一の商品・サービスと見分けが付く、名前としての力のことです。

 

拒絶理由通知書では、以下のように、WEB上の記載を6つ挙げています。以下に、2つ紹介します。

1.「excite.ニュース」の「コラム」のページに「病的で弱々しい『病みかわいい』が若い女性に人気のワケ・・・最近よく耳にする『ゆめかわいいの世界観』。さらにそこから派生した『病みかわいい』が若い女性の間で人気を集めているようです。・・・最近は、薬のカプセルがたくさんついたブレスレットやネックレスなど、『病みかわいい』をコンセプトにしたアクセサリーも人気を
集めています。」の記載があります。

http://www.excite.co.jp/News/lifestyle/20150211/Hanakuro_18029.html

 

2.「ダ・ヴィンチニュース」のウェブサイトに「病みかわいい『メンヘラチャン』×原宿『PARK』コラボアイテム先行予約開始!・・・いま若い女性に爆発的な人気の『メンヘラチャン』。2013年、大学受験を控えていた江崎びす子が、現実逃避にTwitter上にらくがきを公開したことから注目されたキャラクターだ。近年、社会問題化している“メンタルヘルス”や“リストカット”などの重い要素を含みながらも、セーラー服を身にまとったピンク色のツインテールと可愛らしいビジュアルが、サブカルチャーや、個性的で同性ウケする“青文字系ファッション”を好む女性のハートをキャッチ。『病みかわいい』と呼ばれるジャンルの火付け役となった。」の記載があります。
https://ddnavi.com/news/244227/a/

 

意見書を提出

商標出願「病みかわいい」に対する識別力が無い旨の拒絶理由通知に対して、出願人は、以下のような内容の意見書を提出しています。

 

意見書の内容

 まず、当方は特許庁審査官殿が拒絶理由通知書にも引用しておられた『病みかわいい』を世間に広めるキッカケとなったキャラクター『メンヘラチャン』の作者『江崎びす子』と同一人物であります。

 

※商標登録番号5736599と同名であることから確認できるかと思います。当方は2013年の『メンヘラチャン』の誕生と同時に『病みかわいい』という言葉を発案し、商品展開を進めることで世に広め、その活動の末現在のように幅広く認知されるジャンルとなりました。

 

これは特許庁審査官殿が引用していた「excite.ニュース」の「コラム」が掲載されるよりはるか2年も前からです。

この事実の詳細は江崎びす子のブログのエントリー「病みかわいいについて」にも詳しく記載しております。

 

今回出願に至ったのは『病みかわいい』というジャンルの定義を著しく損なうような間違った説明がメディアでなされた為 先駆者であり、その意味を問われた際に的確な説明が出来るものが商標を管理する必要があると感じたからです。

 

以上、申し述べましたように、本願商標は、商標法第3条第1項第6号には該当しないものであると信じますので、審査官殿におかれましては再度ご審査の上、本願商標は登録すべきものであるとのご査定を賜りたくお願い申し上げます。

 

この意見書から分かることは、商標「病みかわいい」の出願人は、『病みかわいい』という言葉を広めた『江崎びす子』(筆名)本人ということです。

 

拒絶査定となってしまう

出願人の意見書での反論も虚しく、商標出願「病みかわいい」は、拒絶査定となってしまいます。

 

拒絶査定の内容

この商標登録出願については、平成29年8月24日付けで通知した理由(商標法第3条第1項第6号)が解消されていないため、商標登録をすることができないとの判断に至りました。

 

出願人は、平成29年9月1日付け提出の意見書において、「病みかわいい」を世間に広めたのは出願人自身であるため、本願商標は上記理由に該当しない、旨の主張をしていますが、本願商標「病みかわいい」の語は、意見書内で出願人も認めるとおり、ファッションやアクセサリーのジャンル・コンセプトの一つとして幅広く認知されるに至っているものです。

 

また、拒絶理由通知書に記載された1.及び4.~6.によれば、「病みかわいい」を謳った商品が出願人以外の者から販売されている事実が見受けられます。

 

そうすると、本願商標「病みかわいい」の語を発案したのが出願人自身であるとしても、当該文字はすでに本願商標の指定商品を取り扱う業界においてジャンルの一を表す語として一般に使用され親しまれているというのが実情ですから、本願商標をその指定商品に使用しても、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識できない商標と認めます。

したがって、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとした、さきの認定を覆すことはできません。

 

弁理士による解説

商標法第3条第6項号識別力の無い商標)の判断時期は、査定・審決時です。

 

出願人は、2013年に『病みかわいい』という言葉を発案し、商品展開を進めることで世に広め、その活動の末現在のように幅広く認知されるジャンルとなった旨、意見書で主張しています。

 

なお、商標「病みかわいい」は、2017年4月7日出願され、2017年9月1日拒絶理由が通知され、2017年9月6日意見書を提出し、2018年2月23日拒絶査定されています。

 

2013年の時点では、「病みかわいい」との言葉は、広く知られていなかったものの、査定時である2018年2月23日には、ネット上等で広く知られたジャンルを表す言葉になっていました。

 

出願人は、査定時よりも4-5年前の2013年に発案し、この時点では「病みかわいい」は広く知られていなかったと主張しています。

 

出願人は、意見書において「商品展開を進めることで世に広め、その活動の末現在のように幅広く認知されるジャンルとなりました。」と、現在は幅広く認知されるジャンルとなった旨自認してしまっています。

 

つまり、出願人は、「病みかわいい」という言葉は、査定時に幅広く認知されるジャンルを表す言葉となっていると主張しているも同然であり、拒絶理由通知書に対する反論としては、全くの失当であると言わざるを得ません。

 

商標出願「病みかわいい」は、出願人本人が出願しており、弁理士等の代理人が関与しておりません。

弁理士が意見書を提出していたならば、出願人のような意見書とはならないですが、本件は、どう意見書で主張しても、登録査定を得るのは難しかったのでは無いかと考えます。

 

これは私の考えですが、特許庁の審査官は、インターネット検索をすると多数ヒットするような世間一般に広く知られているジャンルを表す言葉を、一私人に独占させるのは良くないと考えており、このような商標を登録査定をすることに心理的な抵抗が有り、審査基準ギリギリの場合には、拒絶する方向にする方向への力がはたらくのではないでしょうか。

 

もちろん、出願を拒絶するには、法的な根拠が必要となります。

インターネット検索をすると多数ヒットするような世間一般に広く知られているジャンルを表す言葉は、識別力の無い商標商標法第3条第1項第6号)と認定されています。

 

もし、商標「病みかわいい」の発案者である出願人が、自身が発案した2013年に商標「病みかわいい」を出願していたら、登録になっていたと考えます。

 

自ら、「病みかわいい」という言葉を広めてしまったために、商標権が取得できなかったという結果になってしまいました。

 

商標「デジカメ」について

話は変わりますが、「デジカメ」は、三洋電機の登録商標でした。

商標「デジカメ」は、1985年にユーシス株式会社によって出願され、1988年に登録され、1999年に三洋電機に商標権が移転されています。

なお、商標「デジカメ」は、更新料を納付しなかったことにより、2019年03月27日に、商標権が消滅しています。

 

「デジカメ」という言葉が「デジタルカメラ」を表す略称として一般的に使われている現在では、商標「デジカメ」を指定商品「デジタルカメラ」で商標出願したとしても、その商品の普通名称(略称を含む)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標(商標法第3条第1項第1号)として、確実に拒絶されるでしょう。

 

「デジカメ」という言葉が世間一般に使われていなかった1985年に、「デジカメ」を商標出願したので、「デジカメ」は商標登録できたと考えます。

 

まとめ

 

(1)インターネット検索をすると多数ヒットするような世間一般に広く知られているジャンルを表す言葉は、識別力の無い商標商標法第3条第1項第6号)として拒絶される。

 

(2)ジャンルとして認識される程度に広めてしまうと商標権が取得できないので、商標権の取得を望む場合には、シャンルを表す言葉として確立してしまう前に、商標出願すべきである。

 

 

 

 

 

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