均等侵害(均等論・特許権の効力の及ぶ範囲)

均等侵害(均等論)の概要

特許権の効力特許請求の範囲の記載に基づいて判断されます(特許法70条1項)。

 

対象製品が、特許請求の範囲請求項の全ての構成要素を全て含んでいる場合には、特許権の侵害となり、特許請求の範囲請求項構成要素の1つでも含んでいない場合には、非侵害となります。

 

均等侵害(均等論)とは、対象製品が、特許請求の範囲請求項の全ての構成要素を全て含んでいなかったとしても、均等と評価できる場合には特許権の効力が及んで特許権の侵害となる考え方です。

 

均等論が適用される要件

特許請求の範囲に記載された構成中に判断の対象となる製品と相違する部分が存在する場合に、

 

1. その相違部分が特許発明の本質的部分ではないこと(非本質的部分

 

2. その相違部分をその製品におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達成することができ、同じ作用効果を奏すること(置換可能性

 

3. その製品の製造時点において、当業者がそのような置き換えを容易に想到できたものであること(置換容易性

 

4. その製品が、特許発明の特許出願時点における公知技術と同一ではなく、また当業者がその公知技術から出願時に容易に推考できたものではないこと(容易推考困難性

 

5. その製品が発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たる等の特段の事情もないこと(意識的除外

 

対象製品が、上記要件1~5の全てを満たせば、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許権の侵害均等侵害)と判断されます(平成10年2月24日の最高裁判決(ボールスプライン事件))

 

要件1~3の立証責任特許権者側にあり、要件4、5の立証責任被告抗弁理由である。

要件3の判断時期は「実施時」であり、要件4の判断時期は「出願時」である。

ボールスプライン事件の最高裁判例の抜粋

特許出願の際に将来のあらゆる侵害態様を予想して明細書特許請求の範囲を記載することは極めて困難である。

 

相手方において特許請求の範囲に記載された構成の一部を特許出願後に明らかとなった物質・技術等に置き換えることによって、特許権者による差止め等の権利行使を容易に免れることができるとすれば、社会一般の発明への意欲を減殺することとなり、発明の保護、奨励を通じて産業の発達に寄与するという特許法の目的に反するばかりでなく、社会正義に反し、衡平の理念にもとる結果となる

 

特許発明の実質的価値は第三者が特許請求の範囲に記載された構成からこれと実質的に同一なものとして容易に想到することのできる技術に及び、第三者はこれを予期すべきものと解するのが相当である。

 

特許発明特許出願時において公知であった技術及び当業者がこれから右出願時に容易に推考することができた技術については、そもそも何人も特許を受けることができなかったはずのものであるから(特許法二九条参照)、特許発明の技術的範囲に属するものということができない。

 

特許出願手続において出願人が特許請求の範囲から意識的に除外したなど、特許権者の側においていったん特許発明の技術的範囲に属しないことを承認するか、又は外形的にそのように解されるような行動をとったものについて、特許権者が後にこれと反する主張をすることは、禁反言の法理に照らし許されない。

 

均等侵害の解説

均等侵害は、特許法上規定されてはいません。

 

ボールスプライン事件において、最高裁で判断された特許侵害となる基準です。

 

上述したように、特許権の効力特許請求の範囲の記載に基づいて判断されます(特許法70条1項)。

 

しかし、これを厳格適用した場合には、対象製品が、特許請求の範囲請求項構成要素の1つと少し違う場合には非侵害となり、具体的妥当性が担保できないので、特許権の侵害であると判断されました。

 

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