特許出願の補正

特許出願の補正の目的

なぜ、特許出願補正を行うのかというと、①拒絶理由の解消②誤記の修正が挙げられます。

①拒絶理由の解消

特許出願に対して、新規性違反進歩性違反拒絶理由が通知された場合に、そのまま放置すると拒絶査定となってしまいます。

 

拒絶理由が通知された場合に、指定期間内に特許請求の範囲等を補正することにより、新規性違反進歩性違反拒絶理由を解消して、特許査定に導くことができる場合が有ります。

 

②誤記の修正

特許請求の範囲誤記が有ると、意図していた発明とは異なる権利範囲で特許権を取得してしまう可能性が有ります。

 

このように、特許請求の範囲誤記が有る場合に、特許請求の範囲の補正を行うことにより、意図した通りの権利範囲特許権を取得することができます。

 

特許出願は、出願の日から1年6月後公開公報公開され、特許査定されて登録された場合には特許公報公開されます。

 

特許明細書中に誤記が有ると、その誤記公開されてしまいます。

 

特許明細書中の誤記補正により修正することにより、出願人が意図した形で公開公報特許公報公開されることになります。

 

 

補正の時期的要件

 

出願人は、以下の(i)から(v)までのいずれかの時期に、明細書等について補正をすることができます(特許法第 17 条の 2 第 1 項)。

 

(i) 出願から特許査定の謄本送達前まで(ただし、拒絶理由通知を最初に受けた後を除く。)(第 17 条の 2 第 1 項)

 

(ii) 最初の拒絶理由通知の指定期間内(第 17 条の 2 第 1 項第 1 号)

 

(iii) 拒絶理由通知を受けた後の第 48 条の 7の規定による通知の指定期間内(第 17 条の 2 第 1 項第 2 号)

 

(iv) 最後の拒絶理由通知の指定期間内(第 17 条の 2 第 1 項第 3 号)

 

(v) 拒絶査定不服審判の請求と同時(第 17 条の 2 第 1 項第 4 号)

 

 

補正ができる範囲について

 

願書に最初に添付した、特許請求の範囲明細書図面(以下、明細書等とします)に記載した事項の範囲内において補正を行うことができます(特許法第17条の2第3項)。

 

願書に最初に添付した、特許請求の範囲明細書図面に記載した事項に対して、新規事項の追加となる補正は、その補正却下されて、補正をする前の状態になります(特許法第53条第1項)。

 

このように、新規事項の追加となる補正却下されますので、出願時明細書等の記載が重要となります。

 

出願後に補正できるように、補正のネタを可能な限り明細書に記載していることが重要です。

 

 

新規事項を追加する補正の禁止について

出願当初明細書等に対して新規事項を追加する補正は禁止されています。先願主義の原則に反するからです。

 

以下に、新規事項の追加の禁止についての特許庁の審査基準を抜粋します。

 

補正が「当初明細書等に記載した事項」との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである場合は、その補正は、新規事項を追加する補正でない。他方、補正新たな技術的事項を導入するものである場合は、その補正は、新規事項を追加する補正である。

 

当初明細書等の記載から自明な事項にする補正

補正された事項が「当初明細書等の記載から自明な事項」である場合には、当初明細書等に明示的な記載がなくても、その補正は、新たな技術的事項を導入するものではないから許される。したがって、審査官は、この場合には、補正が新規事項を追加するものでないと判断する。

 

補正された事項が「当初明細書等の記載から自明な事項」といえるためには、当初明細書等の記載に接した当業者であれば、出願時の技術常識に照らして、補正された事項が当初明細書等に記載されているのと同然であると理解する事項でなければならない。審査官は、補正された事項が「当初明細書等の記載から自明な事項」であるか否かを判断するに当たっては、以下の(i)及び(ii)に留意する。

 

(i) 補正された事項に係る技術自体が周知技術又は慣用技術であるということだけでは、「当初明細書等の記載から自明な事項」とはいえない。

 

(ii) 当業者であれば、出願時の技術常識に照らして、補正された事項が当初明細書等の複数の記載から自明な事項と理解する場合もある。当初明細書等の複数の記載とは、例えば、発明が解決しようとする課題についての記載と発明の具体例の記載、明細書の記載と図面の記載等である。

 

例:当初明細書等には、弾性支持体を備えた装置が記載されているのみで、特定の弾性支持体について開示されていない。しかし、当業者であれば、出願当初の図面の記載及び出願時の技術常識からみて、「弾性支持体」は「つるまきバネ」を意味していることが自明であると理解するという場合は、「弾性支持体」を「つるまきバネ」にする補正が許される。

 

 

出願当初明細書に記載されている文言をそのまま、特許請求の範囲請求項に追加する補正は、新規事項を追加する補正では有りません。

 

一方で、出願当初明細書に記載されていない文言を、特許請求の範囲請求項に追加する補正は、新規事項を追加する補正となる可能性があります。

 

当初明細書等の記載から自明な事項」でなければ、新規事項を追加する補正として、補正が却下されて審査されるので、出願当初明細書に記載されていない文言を、特許請求の範囲請求項に追加する補正は、かなりリスクがあるといえます。

 

この場合には、「当初明細書等の記載から自明な事項」である旨、意見書で主張します。

 

 

出願当初明細書に適切な記載が無いので、図面に表されている事項に基づいて、「当初明細書等の記載から自明な事項」であるとして、特許請求の範囲の請求項に追加する補正をすることはよくありますが、新規事項を追加する補正と判断されるリスクは有ります。

 

発明に関連して、図面に表されていることは、将来の補正を考えて、可能な限り文章にて明細書で表しておくことが重要であると考えます。

 

 

図面の補正について

図面の補正に関する特許庁の審査基準

図面の補正であっても、新たな技術的事項を導入するものでなければ許される。

 

しかし、補正後図面は、一般に、新たな技術的事項が導入されていることが多いことに、審査官は留意すべきである。特に、図面に代えて願書等に添付した写真を、出願後に差し替える場合には、このような補正は新たな技術的事項を導入するものである場合があるので、審査官は留意する必要がある。また、図面の記載は必ずしも現実の寸法を反映するものとは限らないので、審査官はこのことについても留意する必要がある。

 

図面の補正として許される一例として、明細書には正しいことが記載されているものの、フローチャートが間違っていて(YESとNOが反対になっている等)、フローチャートの誤記が明らかな場合に、このフローチャートの誤記を修正する補正が有ります。

 

図面の補正が、新規事項を追加する補正となる場合において、国内優先権主張が可能な期間(出願日から1年以内)である場合には、国内優先権権主張を伴った新たな特許出願をすることによって、新規事項を追加する補正となることを防ぐことができます。

 

国内優先権制度については、こちらをクリックして下さい(新しいページが開きます)。

 

 

発明の特別な技術的特徴を変更する補正でないこと(第 17 条の 2 第 4項)

最初の拒絶理由の通知時最後の拒絶理由の通知時拒絶査定不服審判請求時には、 発明の特別な技術的特徴を変更する補正でないこと(第 17 条の 2 第 4項)の要件が課せられます。

特別な技術的特徴については、ここをクリックして下さい。(新しいページが開きます)

 

 

最後の拒絶理由の通知時や拒絶査定不服審判請求時の補正の制限

最後の拒絶理由の通知時や拒絶査定不服審判請求時には、補正は以下の①~④に限定されます。

 

これらの補正の制限は、迅速かつ的確な権利付与を確保する審査手続を確立するために、最後の拒絶理由通知以降の補正を、既になされた審査結果を有効に活用できる範囲内に制限する趣旨で設けられています。

 

ここで最後の拒絶理由とは、原則として「最初の拒絶理由通知」に対する 応答時の補正によって通知することが必要になった拒絶理由のみを通知する拒絶理由通知をいいます。

 

①請求項の削除

②特許請求の範囲の限定的減縮

③誤記の訂正

④明りょうでない記載の釈明


補正
が上記①~④のいずれかに該当しない場合には、その補正却下されて、補正する前の状態で審査を受けることになります。

 

この場合には、拒絶理由が解消されていない場合が殆どですので、殆どの場合において拒絶査定となります。

 

 

特許請求の範囲の限定的減縮について

 

以下の(i)から(iii)までの要件が全て満たされているか否かで判断されます。

 

(i) 補正特許請求の範囲減縮するものであること。

 

(ii) 補正が補正前の請求項に記載された発明(以下この部において「補正前発明」という。)の発明を特定するために必要な事項(以下この部において「発明特定事項」という。)を限定するものであること。

 

(iii) 補正前発明と補正後の請求項に記載された発明(以下この部において「補正後発明」という。)の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であること。

 

つまり、発明を全く別の発明に変更することが禁止されています。

 

補正特許請求の範囲の限定的減縮に限定されている場合において、その特許請求の範囲の限定的減縮を行った後の権利範囲が出願人にとって、狭すぎるとか、意図と違うという場合には、分割出願を行うことにより、特許の請求の範囲の限定的減縮という補正の制限を回避することができます。

分割出願を行った場合には、原明細書の特許請求の範囲明細書図面の範囲内であれば、自由に特許請求の範囲の請求項を作成することができます。

 

分割出願については、ここに詳細に記載しました(ここをクリックすると新しいページが開きます)。

 

 

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