特許出願から実用新案登録出願への出願変更

概要

 

特許出願から実用新案登録出願出願変更を行うことができます(実用新案法第10条)。

 

特許出願から実用新案登録出願出願変更を行う場合の一例として、特許出願最後の拒絶理由通知された場合において、補正意見書によっても、特許権の取得が困難な場合に、実用新案登録出願出願変更を行うことによって、実用新案権を取得することができます。

 

実用新案登録出願は、基礎的要件のみを審査して、新規性進歩性等の実体要件については審査されないので、基礎的要件を満たせば100%登録されます。

 

特許権を取得できない場合であっても、実用新案権を取得することができます。

 

実用新案権は、肯定的な実用新案技術評価書を提示した後でなければ、差止・損害倍書等の権利行使を行うことができませんが、製品や製品のパッケージ等に「実用新案権登録済」と記載することができ、宣伝広告効果や、第三者に対する牽制効果が有ると考えます。

 

主体的要件

 

変更出願の出願人は、原出願の出願人同一でなければなりません(実用新案法第10条第1項)。

 

原出願が共同出願の場合には、共同出願人全員出願変更しなければなりません(特許法第14条)。

 

 

客体的要件

 

原特許出願の特許請求の範囲明細書図面から、実用新案登録請求の範囲を作成することができます。

 

実用新案権の保護範囲は、物品の形状、構造又は組合せなので(実用新案法第6条の2第1号)、方法、化学物質、コンピュータプログラムは、実用新案登録請求の範囲の記載することはできません。これらは、実用新案権の保護範囲では無く、もし記載した場合には、基礎的要件違反となります。

 

時期的要件

 

出願変更時に、特許出願特許庁係属していなければなりません。

 

従いまして、出願変更時に、特許出願が、既に取り下げ、放棄、却下、拒絶査定又は審決が確定、登録されている場合には、出願変更をすることができません。

 

それに加えて、①最初の拒絶査定謄本送達の日から三月を経過した後や、②原特許出願の日から9年6月を経過した後は、出願変更ができません(実用新案法第10条第1項但し書)。

 

 

効果

 

適法な出願変更の場合には、実用新案登録出願出願日原特許出願出願日遡及します(実用新案法第10条第3項)。

 

原特許出願出願日で、実用新案技術評価書無効審判新規性・進歩性が判断されます。

 

 

実務上の特許出願から実用新案登録出願への出願変更

特許出願から実用新案登録出願に出願変更を行うには、特許特許出願の記載内容から可能な限り請求項を新たに作るべきだと考えます。

 

その理由を以下に説明します。

 

①第三者に対する牽制効果を得るため

 

実用新案権は、新規性・進歩性等の実態要件が審査されずに登録されます。

 

そして、実用新案権は、肯定的な実用新案技術評価書を提示しなければ、差止請求損害賠償請求ができません。

 

このことから、実用新案権は意味が無いとおっしゃる方がいらっしゃいます。

 

もし、第三者の実用新案権を実施しても良いかというと、直ちに良いと回答することはできません。

 

仮に、第三者の実用新案権の考案を実施していた場合において、第三者の実用新案権に肯定的な実用新案技術評価書が得られれば、差止請求損害賠償請求がされてしまいます。

 

確実に、第三者の実用新案権の考案を実施できるようにするには、その実用新案権に無効審判を請求して、その実用新案権を無効にすることです。

 

或いは、実用新案技術評価書を請求して、その実用新案技術評価書否定的であるとの結果を得ることです。

 

無効審判の請求実用新案技術評価書の請求も費用がかかるために、無効審判の請求実用新案技術評価書の請求も諦めるかもしれません。

 

その場合に、請求項の数か少ない場合には、先行技術調査をすることによって、簡単に無効理由が見つかるかもしれません。

 

無効理由が見つかった場合には、実用新案権の考案を実施したい者は、無償でのライセンスを求めてくるかもしれかせんし、無効理由が有るからと実用新案権の考案を実施するかもしれません。

 

請求項の数が多ければ、他者に対する牽制効果も高まると考えます。

 

②実用新案権の訂正は限定されているため

実用新案権は、請求項の削除は何回でもできる一方で、請求の範囲の減縮は1回しか許されていません。

 

また、請求の範囲の減縮は、以下の①、②のいずれかの期間の経過後は手続きができません。

①最初の実用新案技術評価書の謄本の送達があった日から2ヶ月経過後

②無効審判請求書の副本の送達により最初に指定された答弁書提出期間経過後

 

このため、請求項の数が少ない場合には、訂正できる範囲が狭くなってしまい、或いは、訂正自体ができなくなってしまいます。

 

一方で、請求項の数が多い場合には、少しずつ請求項を削除する訂正を行うことができます。

 

上記①、②の理由により、特許出願から実用新案登録出願に出願変更を行う場合には、特許特許出願の記載内容から可能な限り請求項を新たに作るべきだと考えます。

 

 

 

 

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