先願先登録商標(商標法第4条第1項第11号)

商標法第4条第1項第11号とは

商標法第4条1項第11号は、先願の他人の登録商標同一又は類似であって、指定商品若しくは指定役務同一又は類似である商標は登録しない旨の規定です。

 

先願先登録商標(商標法第4条1項第11号)拒絶理由は、記述的商標(商標法第3条第1項3号)拒絶理由と並んで、最もよく通知される拒絶理由です。

記述的商標(商標法第3条第1項3号)については、ここをクリック(新しいページが開きます)。

 

商標法第4条第1項第11号、15条の3タイムチャート

 

上の図の例において、出願人の商標は、他人A、Bの商標と、①商標が同一又は類似であり、且つ、②指定商品・指定役務が同一又は類似とします。

 

他人Aの商標は、出願人の商標登録出願よりも、①先願であり、且つ、②出願人の商標の審査時において既に先登録であるので(他人の先願先登録商標)、商標法第4条第1項第11号により、拒絶理由が通知され、拒絶されます。

 

もし、他人Aの先願先登録商標が存在しない場合において、出願人の商標登録出願の日前に、他人Bが商標を出願し、出願人の商標登録出願の審査時に、他人Bの商標が未だに登録されていなかった場合には、他人Bの商標が登録されることにより、拒絶される旨の通知(商標法第15条の3の通知)がされます。この場合には、出願人の商標登録出願が拒絶されるのは、他人Bの商標登録出願が登録された後であり、もし、他人Bの商標登録出願が拒絶されたり、出願人が他人Bの商標と非類似の指定商品・指定役務に減縮する補正を行った場合には、出願人の商標が登録されます。

 

商標の審査期間は、分野や、ファストトラック審査であるか、早期審査であるかによってかなり変わりますが、先の出願日の商標登録出願が商標登録を受けることができます。

 

商標の審査期間は、①通常審査、②ファストトラック審査、③早期審査によってかなり違います。

 

①通常審査の審査開始期間:8-14ヶ月

 

②ファストトラック審査開始期間:約6ヶ月

※指定商品・役務を類似商品・役務審査基準か商品・サービス国際分類表(ニース分類)に限定した出願

 

③早期審査の審査開始期間:約1.7ヶ月

商標出願の早期審査はこちらをクリック(特許庁HP)

商標の審査期間についてはこちらをクリック(新しいページが開きます)

 

先願が通常審査である場合に、後願が早期審査であり、後願の審査が先願の審査よりも先に行われたとしても、後願には商標法第15条の3の通知がなされて、先願に先んじて後願が登録されることはありません。

 

商標の類似について

商標と指定商品・指定役務の同一・類似・非類似の関係

 

出願商標と先願商標との関係が、①商標が同一又は類似であり、且つ、②指定商品・指定役務が同一又は類似の場合には、出願商標は登録されません。つまり、出願商標と先願商標との関係が、上の表において赤(同一)とオレンジ(類似)の組み合わせは登録されません。

一方で、上の表において、白(非類似)の組み合わせは、登録されます。
①商標が同一又は類似であっても、指定商品・指定役務が非類似の場合や、②指定商品・指定役務が同一又は類似であっても、商標が非類似であれば、登録されます。

 

 

(1)商標の類否について

原則として、外観・称呼・観念のいずれか1つでも類似していれば、商標は類似しているとされます。

 

外観とは、商標に接する需要者が、視覚を通じて認識する外形をいいます。

称呼とは、商標に接する需要者が、取引上自然に認識する音をいいます。

観念とは、商標に接する需要者が、取引上自然に想起する意味又は意味合いをいいます。

 

称呼の類否判断について

()(商標審査基準

① 商標「竜田川」からは、自然に称呼される「タツタガワ」のみが生じ、「リュウデンセン」のような不自然な称呼は、生じないものとする。

② 「ベニウメ」の振り仮名を付した商標「紅梅」からは、自然に称呼される「コウバイ」の称呼も生ずるものとする。

③ 商標「白梅」における「ハクバイ」及び「シラウメ」のように2以上の自然な称呼ぶ呼を有する文字商標は、その一方を振り仮名として付した場合であっても、他の一方の称呼も生ずるものとする。

④ 商標が色彩を有するときは、その部分からも称呼を生ずることがあるものとする(例えば、「白い」馬や「赤い」旗の図形)

観念の類否判断について

()(商標審査基準

① 商標を構成する外国語について、辞書等にその意味が掲載されているとしても、当該商標に接する需要者がその意味を直ちに理解、認識し得ないと判断 する場合には、当該商標からその意味による観念は生じないものとする。

② 商標が色彩を有するときは、その部分からも観念を生ずることがあるものとする(例えば、「白い」馬や「赤い」旗の図形)

称呼が類似となる場合の例 (※商標審査基準より引用)

①ともに同音数の称呼からなり、相違する1音が母音を共通にする場合 (例)「ダイマックス」と 「ダイマックス」

② 相違する音の子音を共通にしているか、子音が近似しているか (例) ともに同数音の称呼からなり、相違する1音が50音図の同行に属する場合 「プロセッティ」 「プロセッティ」

  • 識別力を有しない文字を商標の構成に含む場合には、識別力を有しない文字を除いて、商標の類否判断をします。

(※商標審査基準、下記例は商標審査基準から引用)

 (例1)指定役務「写真の撮影」について、「スーパーライオン」と「ライオン」 ※「スーパー」は、役務の品質を表示し、識別力を有しない文字に該当

(例2)指定役務「宿泊施設の提供」について、「黒潮観光ホテル」と「黒潮」 ※「観光ホテル」は、「宿泊ホテルの提供」の慣用商標で、識別力を有しない文字に該当

 

 

(2)指定商品・指定役務の類似について

(※商標審査基準より引用)

(ⅰ) 商品の類否について

商品の類否を判断するに際しては、例えば、次の基準が総合的に考慮されます。

① 生産部門が一致するかどうか

② 販売部門が一致するかどうか

③ 原材料及び品質が一致するかどうか

④ 用途が一致するかどうか

⑤ 需要者の範囲が一致するかどうか

⑥ 完成品と部品との関係にあるかどうか

(ⅱ) 役務の類否について

役務の類否を判断するに際しては、例えば、次の基準が総合的に考慮されます。

① 提供の手段、目的又は場所が一致するかどうか

② 提供に関連する物品が一致するかどうか

③ 需要者の範囲が一致するかどうか

④ 業種が同じかどうか

⑤ 当該役務に関する業務や事業者を規制する法律が同じかどうか

⑥ 同一の事業者が提供するものであるかどうか

(ⅲ) 商品・役務間の類否について

商品と役務の類否を判断するに際しては、例えば、次の基準が総合的に考慮されます。

① 商品の製造・販売と役務の提供が同一事業者によって行われているのが一般的で あるかどうか

② 商品と役務の用途が一致するかどうか

③ 商品の販売場所と役務の提供場所が一致するかどうか

④ 需要者の範囲が一致するかどうか

 

 

商標審査基準については、ここをクリック(新しいページが開きます)

 

 

先願先登録(商標法第4条第1項第11号)の拒絶理由を受けた場合の対処法

 

先願先登録(商標法第4条第1項第11号)の拒絶理由を受けた場合には、先願先登録商標の指定商品・指定役務と同一又は類似する指定商品・指定役務を削除する補正を行うことにより、拒絶理由を解消することができます。

 

つまり、先願先登録商標の指定商品・指定役務の類似群コードと同一の指定商品・指定役務を削除する補正を行います。

 

また、先願先登録商標と本出願とが類似しないとの主張を意見書にて行い、この主張が認められば、拒絶理由が解消します。

 

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